James Webb宇宙望遠鏡

James Webb宇宙望遠鏡は、スピッツァより大きく、ハッブルよりも低温に冷却されます。巨大な遮光板に隠れ宇宙空間に放熱することで、自然と-225℃に保たれます。巨大なミラーと冷却の恩恵で、ビッグバンの2.5から4億年後に生まれたと考えられている最初の銀河を検出するのに必要な感度を持ち得ます。

James Webb宇宙望遠鏡の建設には大きな技術的なハードルがいくつか存在します。ハッブルのように太陽光の中に出入りするので、温度を一定に保つためヒーターを用います。スピッツァは常に地球の影に入るsolar drift away軌道に打ち上げられており、年々1000マイルづつ地球から離れていっています。スピッツァは地球から離れていくことで、地球の影というシールドを使うことができているのです。

James Webb宇宙望遠鏡は、テニスコートほどもある遮光板の影に入るようになっています。二つの理由から遮光板は五つの層を持っています。一つ目は、層と層の間から熱を逃がせること。二つ目は、微小隕石によって遮光板に穴があけられた場合で も、一直線の穴になりにくく、主鏡に日射が入りにくいことです。また、地球から距離が100万マイルのラグランジュ2(L2)ポイント周辺の特別な軌道に打ち上げられる予定です。通常、地球より太陽から遠くに位置する軌道では、公転周期は地球の一年より若干長めで、スピッツァのように少しずつ地球から離れていきます。しかし、L2ポイントでは太陽と地球の重力が加算されるため、太陽と地球、およびL2ポイントは常に一直線になります。Webb望遠鏡の遮光板は、太陽からの直射はもちろんのこと、地球や月の明るい部分からの散乱光からも望遠鏡を守ります。Webb望遠鏡は常に真夜中の空に滞在することになります。

現在、最も大きなロケットの幅は5メートルです。そのため、6.5メートルの主鏡を持つWebb望遠鏡を打ち上げるためには新たな技術開発が必要です。主鏡は、独立に可動する18個のセグメントからなります。ロケットのサイズを超えるため、最外周に位置するセグメントは折り畳み式になっています。遮光板も主鏡の周りに折り畳まれます。打ち上げ後、太陽電池パネルが展開され望遠鏡に電力が供給されます。通信用アンテナが地球に向けられ、望遠鏡と宇宙船が分離されます。最後に副反射鏡が三本足のスパイダーに支えられ、主鏡が完全に展開します。全てが配置されると望遠鏡は明るい星に向けられ、18枚のセグメントが一つの焦点を結ぶようピント調整が行われます。

これらの全ての技術開発はコストに跳ね返ってきます。運用終了までのすべてのコストのうちNASAが50億ドルを負担し、残りをヨーロッパおよびカナダが負担します。1990年代後半の試算では、技術開発、設計および打ち上げ後の運用経費を含まない建設費用は5−10億ドル程度でした。しかし、この建設経費だけでも、現在までに試算の倍を費やしています。増加の原因は、Webb望遠鏡が軌道に乗った時に正しく動作することを保証するための厳格なテストプログラムによるものです。現在までの建設コストは、インフレ補正をし会計処理を合わせたハッブルの建設コストに匹敵します。Webbプロジェクトは、独立した審査の後、実施段階に移行し、NASAはその予算とスケジュールを連邦議会に提出します。

多目的望遠鏡

James Webb宇宙望遠鏡はハッブルとスピッツァの後継にあたります。ハッブルのように、ヨーロッパとカナダの宇宙局との大型の国際協力を代表する存在です。当初の目的は最初の銀河を検出することでしたが、ほぼ全ての天文学的な問題の解決に寄与できる多目的観測装置でもあります。

星や惑星は、ガスとちりの雲の中での重力と角運動量、圧力、磁場の複雑な相互作用の下、生まれます。宇宙塵は星間雲や星が生まれる場所(M16のように暗黒星雲を伴うような星雲)からの紫外線や可視光をほぼ隠してしまいます。赤外線はそのような塵を透過し、生まれつつある星を見ることができます。星は晩年には惑星状星雲を形作ります。周辺の円盤状構造を星が加熱するため、赤外線での放射が増大します。赤外線での高感度、高分解能の観測が可能なWebb望遠鏡は星や惑星状星雲がどのように生まれるかを調査する強力なツールとなるでしょう。

ハッブルやスピッツァのように、Webbも世界中の多くの天文学者によって使われ、美しい画像をもたらしてくれるでしょう。我々が想像もしなかった重要な発見が行われるかもしれません。

  • 'Finding the First Galaxies', Jonathan P. GARDNER, Sky & Telescope 2010年1月